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「大事にしなくていいの?」 「いいんだよ。どうせ次来る時には、田舎のハンガーか都会のハンガーかなんて、アイツも見分けがつかないんだ」 彼は起き上がって、土を踏み踏み寝心地を整えている。 ハンガーは下敷きにしたままだ。 「どうしてカラスを枕にするの?」 「カラスなら誰でもいいってわけじゃないぞ」 「何が違うの?」 「アイツは全身まっ黒なんだ。カラスは皆まっ黒だけど、違うんだ。アイツの黒は、寝る時に見る黒――オイラが安心する色さ」 「素敵だね。僕も見てみたいな」 「ふん。今は都会の空気で汚れちまって、全然安心できないけどな。昼寝の時だって、鼻がムズムズして最悪だったんだ」 寝れたなら、彼は安心していたのでは? そう思ったものの、不機嫌な彼をこれ以上不機嫌にしたくなくて、僕は聞くことができなかった。
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