願い花

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「それは願い花と呼ばれています。その花が芽を出し蕾になり花開く時、願いが叶うのです」 笑顔だが、目が笑っていない。不気味だと思いながらも気になってしまう。 「水は必要ありません。その花は持ち主の願いを吸って成長します」 なので種から育てなければ意味がないんです、と言う。信じられない。非現実的だ。 「騙されたと思って植えてみてください。お代は結構です」 優しい笑顔に戻った店員さんに体の力が抜けた。気づかないうちに力が入っていたらしい。 「注意事項が一つ、」 怖くなって急いでお店を出ようとドアノブに手をかけた俺の耳に落ち着いた声が届く。 「願いによっては大きな代償が必要となりますので」 代償。気にはなったし詳しく聞くべきだとは思ったが、がそれよりも早くこの場を離れたかった。怖くなった。店員さんがじゃない。 この花を植えることしか考えていない自分に。さっきの言葉を聞いてもなお、その気持ちが揺らがない自分に。 駆け足だった足はいつの間にか走り出していた。 花屋の奥の部屋では男が一人、花を愛でていた。 「花が咲くとき、はどうなっているでしょう」
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