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願い花
住宅街から少し外れた場所。あまり人が来なさそうな場所にそれはあった。
「へぇ~、こんな所に花屋なんてあったんだ」
オシャレなお花屋さん。入口のところにも綺麗な花が咲いている。
花に興味はないが、なんとなく惹かれて扉を開けた。
カランカランとベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
「あ、こんにちは」
笑顔で迎えてくれたのは、若くい男の人だった。間違いなくイケメンの部類に入るであろう整った顔に抜群のスタイル。芸能人と言われても納得できる。
「どんな花をお探しですか?」
「えっと……」
そう問われ迷ってしまった。花が欲しくて来たわけではない。
「それでは、願いごとはありますか?」
返答に困った俺を見てキョトンとした顔をした後、察したらしい店員さんはまた優しい笑顔でそう言った。
願いごと、そう言われて直ぐに一つ頭に浮かんだ。
「絶対叶わないですけど、」
苦笑い。叶うわけがないが、それでも願ってしまう。
「聞いても?」
この人になら良いかと話すことにした。
「俺、仲良いヤツがいるんですけど」
思ったよりもスラスラ言葉が出てきた。
「運動できて勉強も出来て明るくて優しくて、オマケに顔も良くて」
少し下を見ていた目線を店員さんに向けると、目が合った。
「クラスの中心にいるようなやつで俺とは正反対」
こんな俺とも仲良くしてくれて、本当に大事な友達なんです、と続いた言葉に頷いてくれた。
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