願い花

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「でも、大事だけど羨ましくて嫉妬してるんです」 この醜い感情に気づいたのは何時だったか。 そしてこう思った、 「あいつになりたい、って」 その言葉を口にした瞬間心の中を支配したのは、嫉妬心ただそれだけになった。それまでは大事で大好きだという気持ちもあったのに、突然そんな気持ちはどこかに行ってしまった。 「それでは、取っておきの花をあなたに」 そう言って奥にある部屋に姿を消した。 花を選ぶ時は花言葉を大事にする。こんな気持ちに合う花はきっとお店に出して置けないのだろう。 少しして戻ってきた店員さんの手にはちいさな袋。 「こちらをどうぞ」 「あの、これは?」 花を持ってくるのかと思えば袋を渡され戸惑った。 「花の種です」 「……種」 はい、と笑う店員さん。なぜ種なのだろうかと首を傾げる。 「その花は種から育てなければ意味が無いのです」 「意味がないって、」 花言葉では無いのだろうか、よく分からない。
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