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「次なー」なんて言って溜息を吐くように空を仰ぐ大樹。
その行動と言葉の意図が詠めなくて、一抹の不安を覚えた尚弥は大樹の肩口の洋服を掴むと口元をへの字に曲げた。
「つ、次がないとか言ったらぶっ倒すからなっ」
我ながら小学生かと突っ込みたくなるが、尚弥にとっては必死だった。
そんな尚弥の肩を掴んだ手が大樹の右手に掴まれて、一気に体が傾くと
そのまま仰向けになった大樹の体へとダイブする。
「ちょっ·····」
自然と大樹の胸元に頭を落とす状態になり、彼の心音に心地よさを感じては
このまま離れてしまいたくない気持ちになる。しかし、辺りに誰もいないとはいえ公衆の面前でいちゃつくカップルを軽蔑の眼差しで見ていた尚弥にとって
自分がそうなるのは、恥ずかしくて避けたい状況だった。
地面に手をついて大樹から離れようと試みるががっちり背中をホールドされてしまう。
「尚弥に倒されるなら本望かもなっ……珍しく積極的なこと言うんだな」
ぼそりと呟いた大樹の言葉に思わず顔をあげる。倒すというのは攻撃的な意味で言ったわけであって、他の意味など含んでいなかった。
しかし、大樹のニュアンスからすると明らかに尚弥が思っている解釈とは違う方向を向いていることは明確だった。
「はぁ?そ、そういう意味で言ったんじゃ…」
「俺は大歓迎だぞ。主導権が尚弥で御奉仕するのも…なんなら夜空の下でするっていう選択肢もロマンチック…」
「ないに決まってるだろっ、きもいっふざけんなっ」
突拍子もない発言をする大樹に翻弄されながらも、離れられない胸に両手でポカスカと力のない拳を交互に叩きつける。そんな尚弥を面白がってか、背中をあやす様にさすりながら「冗談、冗談」と余裕を見せつける様が余計に憎らしかった。
そんなことを言いながらも一生離れるもんかと縋るように大樹の体温の心地よさに顔を埋めて安心感を求めてしまう。
大樹のロマンチストに感化されては、一生彼と共にあり続けられることを
願ってしまう僕がいる。
こんなに心地よくて、温かくて、自分に力を与えてくれる愛を手放したくない。数か月前、踏み出すことを恐れ葛藤していた自分に今、幸福感で満ち溢れていることを教えてやりたいくらいだった。
彼と一緒にいれるだけでいい。
あまりの心地よさにうとうとしてしまいそうになる尚弥を怒りもせずに彼はじっと空を眺めている。
尚弥はそんな大樹に甘んじて静かに瞼を閉じると彼の心音を子守歌に眠りについた。
END
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