尾久の栄依子ちゃんシリーズ お父さんの『おみやげ話』

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話の終わったタイミングで ただいまー、と、ワカが戻ってきました。 コロッケのいい匂いとともに。 「さあ、ご飯ですよ  みんな手を洗って  お膳の準備をしておくれ」 ワカの掛け声で 姉妹は立ち上がって 大きな丸いお膳を拭き、お茶碗とお箸を並べます。 ワカが、コロッケを銘々のお皿に取り分けます。 小さなバラの描かれた楕円のお皿は 洋食の時にワカが使う、栄依子のお気に入りです。 栄依子たちは、おかずが公平に分配されるか ワカの手元をじいっと見ています。 ワカと姉妹のおかずは一緒で メンチカツとお芋のコロッケが一つずつ。 藤平と、長男の敏夫は別で、 とんかつ一枚とメンチカツです。 敏夫はまだ6年生ですが 期待の一人息子ですから、おかずが姉妹とは違うのです。 それぞれ、自分のお皿を お膳に持って行って座りました。 そこへワカが、 炊き立てのご飯をたっぷり入れたお櫃に 固く絞った濡れ布巾をかけて運んできました。 「さあ、ご飯もお櫃にたっぷりあるわよ」 それを見たとたん 姉妹は、さっき聴いたばかりの 桜ヶ池の大蛇がお櫃のご飯を全部食べてしまう話を 思い出しました。 小さな祥子が 「いやだ~大蛇が来る~~」 と叫んで、わっと泣きだしましたので 兄妹たちも藤平も笑い出しました。 ワカだけ、わけがわからず キョトンとしていたのです。 おしまい🐍
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