尾久の栄依子ちゃんシリーズ お父さんの『おみやげ話』

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さて、栄依子が玄関を奇麗に掃き終わり お昼も回ったころ 藤平は尾久の家に戻りました。 静岡、富士の実家の用事がすんで 朝一番の東海道線に乗ったのです。 藤平の実家は 茶畑と養鰻場を経営していましたので 大抵、深蒸し茶と ウナギのかば焼きをお土産にもらってくるのです。 それをアテにして、家ではワカが ご飯を炊いて家族で待ち構えていたのでした。 「ただいま!」 藤平はハンチングと外套をワカに手渡しながら 取り巻いた子供たちに言いました。 「今日はなぁ、ウナギは無しだよ 近頃、ウナギはすべて軍の買い上げで 家族の分もないんだそうだ。 代わりにお土産買ってきたぞ」 そう言って、ワカに 杉の香りがする大きな経木 (キョウギ・生木の薄板で作った簡易包装の箱)を 4,5個も渡しました。 駿河湾名物の釜揚げシラスと桜エビでした。
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