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小説投稿サイトはいい。いろんなジャンルや作品を簡単に選べて読める。しおりを挟んですぐに他の作品にもジャンルにも行ける。
好きでなければ、次に行く。
時に敵わないかもと思うレベルの作品に出会うこともある。
この作品を書いた人がアマチュアで、私が端くれでもプロであれることが不思議だった。
初のおかげだ。見つけてくれた。一緒に考えてくれた。確認してくれた。そして背中を押してくれた。公私でパートナーになってくれた。そのために学生の頃から憧れた仕事を辞めさせることになってしまった。
初はそのことを後悔していないと言う。きっと嘘ではない。本当にそう思ってくれている。だとしても私がそのことを気にしないというわけにはいかない。私自身がまったく後悔しないということもない。彼の違う人生を考えてしまうのも仕方がない。
暗い気持ちになりかけたときは、コメディジャンルを読む。ああ、私はまだおもしろいと思うことができるんだと考えてほっとする。
今日はミステリーを読もう。できれば人が死なない方がいい。どんな形であっても死は怖い。怖いけれど避けられないものだとはわかっている。私の死で初は幸せになれるかもしれない。また夢に戻れるかもしれない。そうであってほしい。
準備をして戻ってきた里見さんが、脚を拭いてくれる。指の一本一本まで丁寧に。私はサイトのページを捲る。この作品はまだ誰も死んでいない。
椿は「嘘つきになって」と言った。「素敵な嘘つきになって」と。
重版が決まったたった一本の小説は、私を「素敵な嘘つき」にしてくれたのだろうか。椿との約束は、あの一本の小説で果たすことができたのだろうか。それならばもう書かなくていいはずだ。
だけど私は足掻くように書き続けている。その理由が知りたい。
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