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ドライブには里見さんもついてきてくれた。
初が運転する車の後ろ、固定された車椅子の横で、視線と瞬きで文字が打てる新しいパソコンを持ってついていてくれる。
私は思っている。私が椿の元に行ったあと、里見さんが初のそばにいてくれないかなと。
まだ誰にも見せていない二作目の物語は、実はそんな話だった。
ねえ、椿。あの物語を最後まで書けたら迎えに来てくれる?
強い風が吹いた。満開に咲いた桜から私の上に花弁が降る。
椿が怒っているのかな。ううん違う、慰めてくれている。
そうだね、足掻くように書いているのは、そんなためじゃない。生きていることを確認していた。
ねえ椿。私は素敵な嘘つきになれた?
あなたとの約束を守れた?
まだ書いていられるのかな、いつまで書いていられるのかな?
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