1人が本棚に入れています
本棚に追加
1
ある奇妙な話をしようと思う。奇妙で悲しい一人の女性の不可解な物語を。私の名前はアーサー・ゴードン。ロサンジェルスで、雑誌記者をやっている。雑誌記者と言えば聞こえはいいが、要するにパパラッチである。映画スターやお騒がせセレブと呼ばれる人たちを相手に私生活を覗き込み、時にはあること無いことでっちあげ、ゴシップ好きの国民たちに消費させる。
一晩中、スターの自宅前に張り込むなど日常茶飯事である。時には、無人島まで小型ボートで偵察し、プライベートビーチでくつろぐスターの写真を撮る。そういった写真や記事の売れること売れること。
今まで私が記事にしたスターは、ロレッタ・ヤング、シェリー・ウィンタース、タイロン・パワー、モンゴメリー・クリフトなど。一番、記事が売れた俳優はマリリン・モンローである。
ただし、記事にした映画スターは数知らずだが、私にとって唯一無二の俳優がいる。私がこの職業を選んだきっかけと言っても過言ではない、我が青春の花、メイ・ウィリアムズである。ハリウッド黄金時代に燦然と輝く女優。ビリー・ワイルダーもエリア・カザンもウィリアム・ワイラーも名監督たちがこぞって起用した、一流の女優である。二十歳でスクリーンデビューした後、常に映画界のトップの座に君臨した。
最初のコメントを投稿しよう!