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「ザルガニも無事だったし、本当に最高です!先輩、今日はありがとうございました!!」
沙菜は街灯の下を要と並んで歩きながら元気一杯に礼を言う。
その嬉しそうな顔を見ながら、なぜか要は言いようのない寂しさを感じていた。
「ザリガニが戻ったら、もう会うこともないね」
「え……」
「部活頑張れよ、応援してるから」
しかし要の励ましの言葉に、沙菜は一瞬黙り込むと次の瞬間、思いもよらない言葉を返した。
「──辞めます」
「え!?」
「先輩に二度と会えなくなるなら飼育栽培部なんて辞めてやります!!」
「何で???」
急に立ち止まり、両手の拳をプルプル震わせ始めた沙菜に、要は仰天して思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
うつむいた彼女の顔を恐る恐る下から覗き込む。
すると沙菜はポロポロと大粒の涙を流していた。
「だって、先輩がいないならザルガニを私一人で探してもワクワクしないもの!!先輩がいないなら先生の部屋に忍び込んでもハラハラしないもの!!先輩でない他の人なら、ギュッて抱きしめられても好きになんかならないもの!!」
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