君に好きと伝えられたら

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
次の日の放課後、僕は皆が帰った後彼女の机にこっそりと手紙を入れた。 僕は手紙にミゾホオヅキの押し花を張り付けておいた。 あのホワイトデーの時と同じように。 花が好きな君が気付くことを願って。 僕はゆっくりと教室を出て、屋上へ向かった。 僕と入れ違いで後ろから誰か教室に入ったようだが、僕はあまり気にも留めなかった。 「ハァ…」 僕は大きなため息をついた。 手にはうっすらと汗が滲んでいた。 明日のことを考えると気が気ではなかった。 彼女は手紙の主が自分だとはきっと気付かない。 けど、あわよくば気付いてほしい。 そんな思いで頭がいっぱいだった。 「君に好きと伝えられたら良いなぁ」 毎日毎日同じことを思う。 けど、そんな気持ちを伝えられる勇気が出ない自分が、毎日嫌で堪らない。 「好きと言えば君はなんと言うかなぁ。」 そんな妄想を考えてしまう自分が不憫に思うこともあった。 「…君に気持ちを伝えられなくても、僕は君が幸せならそれで良いんだけどね」 僕は空に向かってそう呟いた。 ガチャ。 その時、屋上のドアが勢い良く開いた。 振り向くと、息を切らした女性が立っていた。 その手には、手紙が握られていた。 風に乗って、ミゾホオヅキの花の匂いがした。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!