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岡山駅近くに駐車していた和宏の車で1時間と少し。
私たちは、K町に着いた。
人口1万人ちょっとの山と自然に囲まれた町は、新しい住民となった私を穏やかに迎えてくれる。
私たちが結婚するにあたり、借りることになったのは、町役場に近い一軒の空き家だ。
元々店舗兼住宅だったそこは役場前の通りに面していて、高齢のご夫婦が小さな洋菓子店を営んでいたそうだ。
ご主人が亡くなりホームに奥様が入る事になって、都会に住む息子さんが更地にして売ろうと考えていたのを聞いた和宏が、交渉してそのうち買い取ることも視野に居抜き物件として、しばらく借りる事にしたと言う。
ゆくゆくはパン屋をやりたい私の夢を叶えたいという和宏の気持ちが、うれしい。
町には移住者も多いようで、役場に勤めている和宏は顔を合わせる機会が多く、その人たちとも仲良くなっている。
移住の先輩や地元の方に色々教えてもらって早く溶け込みたいと改めて思った。
家に到着し、先に送っておいた私の荷物と和宏のアパートからの引っ越し荷物が、予想以上に荷解きされずに置かれているのを見て、年度末のこの時期、本当に和宏は忙しかったんだろうなと思い、しばらくは片付けと掃除を頑張ろうと考えていた。
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