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夕方には買い物を終え、自分の荷物を片付け始めた和宏を横目に夕ご飯を作る。 この半年の間に数回訪れていたアパートは一口コンロだったが、ここは家庭用のグリル付きだから同時進行で調理ができて助かる。 実家から実里さんのアパート、私と会った頃に住んでいたマンション、新潟のマンション、この町のアパートそしてこの家と和宏は引っ越しをする度に荷物を減らして来たらしく、片付けを始めれさえすればそれなりのところまで片付け終わっていた。 「瑞稀、あれやってくんない?」 「あれ?」 「帰ったダンナに言う定番。」 「な、何言うのよ。」 「片付け頑張ったんだから聞きたいなぁ。あれ…お風呂にする?ご飯にする?ってやつ。」 「お風呂にする?ごはんにする?」 「だからぁ…瑞稀、わかってて惚けてるだろ。」 「バレた?」 ふたりでクスクス笑う。 そっか…新婚みたいじゃなくて、私たち新婚なんだ。 今日から矢野瑞稀なのよね。私… こんな何気ない時間が私に訪れるなんて思ってもみなかった。 「辛」が「幸」に変わったんだよね。 高校時代の片思い。 再会していつも温かく見守ってくれていた半年弱の恋人の時期。 突きつけられた事実を乗り越えるまでの離れていた2年近く。 そしてやっと同じ方向を向いて、遠距離だけど婚約者になった半年。 遠回りになったけど今となっては、どれもここに辿り着くために私たちに必要な時間だったようにすら思えてくる。 「和宏、ごはんにする?お風呂にする?それとも私?」 私は和宏に少し上目遣いで言ってみた。 「瑞稀を食べて、瑞稀の作ったごはんを食べて、瑞稀と風呂に入る。」 そう言うと和宏は、私を抱き上げお姫様抱っこのままベッドに運んでくれた。
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