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結局、先に食べようとなり、食卓をふたりで囲む。
そのうちふたりが3人になるのかな。
「何、考えてる?」
豚丼を食べながら、こちらを見る和宏に聞かれた。
「そのうち家族が増えて、ここも賑やかになるのかなって。」
「難しいとこだな。」
難しい?それって…
私の心配は、杞憂に終わった。
「瑞稀と俺の子、早く欲しいけどもう少しふたりの時間を楽しみたい気もするし、悩みどころなんだ。祐里見ると子どもってかわいいしなぁ。それで瑞稀は、どっちがいい?」
「どっちって…」
「明るい家族計画。ゴム付けてするか、自然に任せてするか。」
「する前提?」
「当たり前だろ。俺たち新婚だよ。さっさと食べて続きから…」
「さ、先にお風呂入ってからにしよっ。」
「それじゃ、一緒に入るか。」
立ち上がる和宏に洗い物が…と言ってみたが、却下され、食べ終わったばかりの丼を洗われてしまったので、バスルームに後ろから押されるように連れて行かれてしまう。
アパートと違い、脱衣所も洗い場もあり浴槽もふたりが楽に入れる広さなので、問題はないけれど、恥ずかしい。
「ん?早く脱ごうよ。」
和宏って、こんな人だっけ?
太陽みたいに優しく温かく私を包んでいた和宏。
自分と自分の家族の事で傷ついていた和宏。
でも、そう言えば、記憶にある昔の佐々木くんは優しいけど、ごくごく普通の男の子だった…
そうすると今の和宏が、飾ったりしていない素顔の和宏なのかな。
「今日の和宏、高校の時みたい。」
「ガキっぽいか?嬉しくてカッコつけられてないよな。ダメだよな。」
「ずーっと一緒にいるからね。そんな和宏も大好きだよ。」
私がそう言うと、キョトンとした顔を一瞬したが、嬉しそうに笑って、キスしてきた。
夫婦になって初めての夜は、和宏に包まれて何度も高みまで連れて行ってもらい、幸せを噛み締める夜になった。
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