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16 side和宏
4月1日 人事異動で新しく来た人たちの挨拶が終わった朝礼の最後、司会の係長が「他に連絡事項ありますか?」と言ったところで手を挙げた。
「私事ではありますが、3月30日に入籍しました。妻もこちらで暮らし始めましたので、移住がひとり増えました。」
「えっ、いつの間に?」
「おめでとう。」
パチパチと拍手を受け、頭を下げる。
ざわざわとしたまま朝礼が終わり、自席に戻ると隣の席の先輩、水原さんが顔を寄せて来た。
「聞いてないぞ。」
「言ってませんでしたから。」
「相変わらず秘密主義だな。」
「失敗したら恥ずかしいじゃないですか。」
「いや、結婚決まったら失敗はないだろ。」
「入籍するまで、ギリギリで覆されるんじゃないか心配でしたから。」
「お前、そんなに綱渡りな恋愛してたのか?」
「そうじゃないんですけどね。」
水原さんに変な想像をされてなきゃいいけど。
瑞稀が俺を弄んでいたわけじゃない。
ただ俺たちの間に10年前の出来事が暗く横たわり、母さんの告白で俺が身を引こうなんて瑞稀の気持ちを考えない行動を取ったことがいけないんだから。
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