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昼休みになり、机の上に弁当箱を広げると早速目の前の吉田さんと水原さんが覗き込んできた。
「わぁ、愛妻弁当ですか?」
「おっ、美味そうだな。」
昨日は、俺のせいで朝早く起きれなくて
「お弁当を作れなくてごめんね。」
と布団の中から恥ずかしそうに顔を出す瑞稀を抱きしめたくなり遅刻しそうになったが、今日はちゃんと作ってくれた。
料理上手の瑞稀は何を作っても美味しいが、今日は俺の好物のハンバーグとアスパラベーコンが入っていて、テンションが上がる。
「ひとつ味見させろ。」
「嫌です。」
水原さんが手を出そうとするのを避けるように弁当箱をずらし、口に入れる。
「ケチ…」
「水原さんも奥さんに作ってもらえばいじゃないですか。」
「あのな、子育て中で大変な嫁にそんなわがまま言えないだろ。」
調子のいい水原さんだが、高校の同級生という奥さんと2歳になったばかりの娘さんがかわいくて仕方ない愛妻家のいいパパだ。
俺もこんな父親になりたいと思える先輩が、
「矢野のケーチっ。」
とぶつぶつ言っているのを横目に瑞稀のお手製弁当を味わうのだった。
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