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「瑞稀…きれいよ。」 「お…かあさ…」 黒留袖姿の母が、涙を浮かべながら微笑んでいた。 「な、なんで…」 「花嫁のベールを下げるのは、母親の仕事でしょ。お父さんはバージンロード歩くの楽しみにしているわよ。」 「えっと?」 「和宏くんからサプライズでゴールデンウィーク中に家族だけで結婚式やりたいから来てくれって言われた時は驚いたけど、本当に知らなかったのね。」 だって…和宏とお義母さんが納得できるまで式はやらないって決めていたのに。 「あ、そうそう和宏くんのお母さんとさっき久しぶりに話をしたわよ。高一の参観会以来ですよねって。」 「はい?」 「聞いてなかったの?挨拶に来たときは疎遠って言ってたけど和宏くんのお母さん、ちゃんと来てくれてよかったわよね。」 母の言葉が一瞬、理解できなかった。 「和宏のお母さん?どこで?」 「さっきね。もう式場にいると思うけど。それよりほら、ベール下ろして行かなくちゃ。」 母に追い立てられるようにベールを下されると式場のドアの前に立つ父の元へ連れて行かれた。 「お父さん…」 「な、何も言うなよ。ただでさえ緊張しているんだからな。」 父は緊張でかちこちのようで、このままだと右手と右足が一緒に出そうな感じだ。 「ひとことだけね。ありがとう。」 「だから泣けて前が見えないだろ。」 父につられてわたしも泣いてしまい、結局ふたりとも涙が止まり、スタッフの方にメイクを直してもらうまで中断させてしまうことになった。
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