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ドアが開くと祭壇の前にいつもと違い前髪を上げて、シルバーグレイのタキシードを着た和宏が待っている。
「瑞稀…」
横にいる父に促され、和宏の横に立つ。
「瑞稀、綺麗だよ。」
「ちょっと、褒めてくれるのはうれしいんだけど、どういうこと?」
牧師様を前に小声で状況説明を和宏に求める。
「瑞稀との約束、母さんが認めてくれたら結婚式挙げるって言っただろ。実里に手伝ってもらって、母さんをここまで引っ張り出したんだ。」
「だったら、話してくれても…」
「瑞稀のご両親やおばあさんは瑞稀の結婚式を楽しみにしていたんだよ。叶えてあげたいけど、ギリギリまで母さんの気が変わらないか心配だったから、瑞稀にはサプライズにしてますって話したんだ。」
「でも…」
「瑞稀に事前に話して、もし母さんが来なかったら辞めるって言わなかった?」
「それは…」
「実里には、事情を話してないけど、お姉ちゃんとして間に入ってくれたんだ。だから母さんも渋々かもしれないけど来てくれた。家族だけの式だけど、いいだろ。」
そう言われたら頷くしかなかった。
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