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ハッと目が覚め、また夢…思い出したくない悪夢を辿ってしまっていた事を自覚した。
周りを見回し自室のベッドの上だと確認してからゆっくり息を整え、「これは夢、これは夢。」と繰り返す。
私が一人で留守番中に押し入った男に襲われたのは、今から7年も前、高校の卒業式を終えて、合格した大学への進学を楽しみにしていた頃だった。
帰宅した母親が発見した時には、全裸の私がリビングの床に男の体液に塗れて意識を無くして横たわっていたらしい。
あまりのショックに私はどうやって男に襲われたのか前後の記憶をまだらに無くしてしまい、男の顔も覚えていない。
病院での診察や警察の対応が済んでも落ち着かない私は大学進学を諦め、母親の実家に身を寄せた。
そして犯人が捕まらないまま7年が経ち、現在、母と祖母と実家で暮らしながら近所のパン屋でアルバイト生活をしている。
男性がすっかり怖くなった私のために父は単身赴任を選び、母は実家近くの知り合いの会社に転職してくれた。
そして祖母と養子縁組をして矢沢瑞稀から母の旧姓高島瑞稀に名を変えた。
それでも忘れたはずの記憶は夢となって私に何度も突きつける。
私に何が起きたのか。
そして夢を見ると男性が怖いはずなのに、身体の芯が熱くなる自分が嫌でたまらない。
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