1007人が本棚に入れています
本棚に追加
「瑞稀ちゃん、悪いんだけど早いけど閉店処理だけ頼んでいい?佳奈が具合悪いらしくてこども園にお迎え行ってくるから。」
真理子さんは5歳の佳奈ちゃんと2人暮らしのシングルマザーだ。
真理子さんに日頃大変お世話になっているから、閉店処理の売り上げ計算や店の片付けくらいなら、私にも出来るからと請け負った。
「早く行ってあげてください。カギはいつものとこに入れて、売り上げは銀行の夜間金庫に入れてきます。」
「ありがとう。ごめんね。」
真理子さんがバタバタと店を出て行くのを見送り、いつものようにキープしておいたセール品のパン一袋を自分用に購入してから、売り上げとレジ内のお金の確認をする。
金額が合っていることにホッとして、時計を見るとまだ17時。
いつもより閉店には早いけど、残っているパンもほぼないからなと思い、電気を消しシャッターを閉めて店を出ようとしたところで、後ろから声がした。
「あれ?今日はもう閉店ですか。」
少し低めの声が聞こえた瞬間、ドキリとした。
『すげーな。初めてなんだろ?お前サイコーだな。』
あの声が、フラッシュバックする。
似ている?でも少し違う?
不安げな顔で振り返ったせいか、申し訳なさそうな男性が立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!