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夜間金庫に売り上げ金を入れて、家に帰り、自分のパンをあげちゃったから、朝ごはんがない事に気づいた。
「仕方ないか。何かあるだろ。」
母も祖母も朝早いから早起きすればいいだろうと決めて、今日会った人の事を思い出す。
矢野さんか。
佐々木くんに似ていたなぁ。
そういえば名前もかずひろだった。
佐々木くんは、どうしているかな。
すっかり男性が苦手なくせに過去の片思いを忘れていない自分に苦笑いする。
私が佐々木くんを好きになったのは、高校1年の時、同じクラスでおとなしい私にも声をかけてクラスの輪に入れてくれたのがきっかけだった。
彼は優しく明るいムードメーカーで、クラスどころか学校の人気者。
サッカー部の練習は、いつも女の子たちが群がっていて、私は教室や料理研究部の活動中に家庭科室から眺めるのが、精一杯。
2年、3年は別のクラスになって、話すことも出来なくなった。
大学は卒業式の後に合格発表だったし、あの後、学校に貼り出してある合格者一覧を見にも行けなかったから、佐々木くんがどこの大学に進学したのかも知らない。
成人式も同窓会も行けなかった。
人の口に戸は立てられないから…
私の事件は地元じゃ、かなり広まったらしいし、私もあの町に戻りたくない。
だからもう会えないし、彼ならきっと仕事も恋愛も順風満帆なんだろうから、1年の時のただのクラスメイトの事なんか忘れているだろう。
そう思うと涙が溢れて来た。
私が何をしたって言うの?
神様、いつまでこの苦しみは続くの?
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