1人が本棚に入れています
本棚に追加
2、ご指名ありがとうございます
その人は腰ぐらいまでの艶のあるブラウン色の髪に、ワイン色の胸元が開けたドレスを身にまとった女の人だった。
「あの!」
女の人は私に気づくとハイヒールの音を鳴らし近寄ってくる。女の人はキラキラとしている目を大きく見開きここはどこかと尋ねてくる。
最初は彼女自身が情報整理整頓をできていないからか何を言ってるのか、聞いているこちらが混乱したが要するに……
胸の谷間に挟まれたお金の額を確認するたため、トイレに行きお金を数えたついでに用も足してトイレのドアを開けたら知らない街にいた。
と言うことらしい。驚いて振り返ったがそこに見えるのはあの靄がかかったタワーだったという。
お店の名前はキューティーバニーというらしい。
「これ、夢だよね!?ありえないでしょこんなこと!!」
そう叫ぶように言い私の両肩をゆすった。私は私も夢なのではないかと疑っていることをいうと、彼女は私の両肩に乗せていた手をどけ歩きだす。
ハイヒールの音が心なしかさきほどより小さく聞こえる。どこに行くのかと尋ねると夢だ夢だと独り言を言う。
「何でついてくんの!?ストーカー?」
後をついてきた私のほうを振り向いて彼女がいう。理由は一つ。彼女を観察したいからだ。そのことは言わず黙っているとふくれっ面をしたあと歩みを続ける。
そのまま進むと……、プラスチックにぶつかる音がした。彼女は壁にぶつかった。
「えー?何?」
驚いた彼女は目の前の見えない壁に手を這わせる。私の方を振り返り何これ、どうなってんのと詰め寄ってくる。
私はこの見えない何かを見えない壁と呼んでること、この壁は続いてて大体前後左右三百メートルあり、出れるところは今のところ見つからないことを話す。
彼女は「はぁ?」と呆れるようにいう。更に人がいないことを言うと彼女はコンビニの方へ行き中へ入る。
しばらくして出てきた彼女は「何で誰もいないの?」とさきほどより少し落ち着いた様子でいう。
少し落ち着いた、というよりは呆けている彼女に私はコンビニの商品に触ってないか一応聞く。
予想通り彼女は触っていなかった。じゃあ、一体商品が動いたのは……、やはり怪奇現象か夢なのか。
「ちょっとあなた、私が普段使っている化粧水は?」
突然の質問に首を傾げ、適当にCMで聞いたことある商品名を言うと彼女はうつむいた。
今のは何だったのか聞くと、夢ならあなたはあたしが生み出した仮想の人物。だからあたしのことならなんでも答えられるんじゃないかと思って。と確認したみたいだ。
それならと思い今度は私が彼女に私が通っている大学の名前を聞いてみた。
彼女は分からないと答える。
私たちは目を合わせお互いどうやらこれは夢ではないらしいとうなずく。
少しの沈黙のあと、彼女は名乗った。
「あたしは高田 彩華あなたは?」
「山口 美雪」
私が名乗り返すと高田彩華は深いため息を漏らし愚痴るように、意味がわからないやメイクを直したいという。
「ってか山口さんはやっぱり本当の人間?夢の中の人物だったりしない?」
再度疑ってくる彼女に私は首を横に振る。夢の中の人物ではないし、本物の人間だ。じゃあ山口さんはいつからこの場所にいるのと聞かれたので、自分の事の顛末を話す。
解体作業ということは伏せ、家の中を整理整頓していて疲れたから休んだ。そして寝て目が覚めたら暗闇の中にいて歩いて進んだらこの場所に出たと伝えた。
最初のコメントを投稿しよう!