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片桐 正明は大学で動物実験をしていたそうだ。といってもマウスでの実験だが。
最初はマウス、ネズミで満足していたが、やがて片桐はネズミだけではつまらないと感じるようになっていった。
犬や猫でも試したい……。そう思い片桐は実験に使わせてくれないかと知り合いに頼んだが、案の定断られ落ち込む。
何かいい方法はないか。
しばし考えた結果、保健所から引き取った犬猫を使おう。そう考えた。
保健所で話す際は実験のことは言わず、ただ家族として向かい入れたいと言った。
犬一匹、猫一匹引き取り小さいキャリーに押し込み、家へ連れ帰った。
一緒に暮らしている叔母さんは片桐に無関心だ。汚くしないでねと一言ぼやくだけ。
片桐はさっそく実験を行った。
最初は皮膚や食べ物飲み物から始まり、次第に片桐の興味は解剖へと向かった。
実験により弱った犬や猫は邪魔と判断し、殺して埋めた。
同じ保健所には行かず、少し離れたところにいったりした。
ーー保健所の犬や猫なんてほとんどが殺されてしまうんだ。なら実験台として使われ死ぬほうが有意義だろう
楽しそうに臓器を見た時の感想など話している片桐を見て、私は片桐と私は似てる感覚の持ち主かもしれないと思った。そう思えたからか、好感を抱いた。
「君は怒らないんだね。前にこういう事を話した時なんかは、ものすごい反感を買ったよ。有意義なのにね」
叔母さんは何も言わなかったみたいだが、同じ研究仲間やネットで出来た友達に反発されたらしい。しかし本人は無意味な虐殺でもなければ、虐待をしているわけではない。
世の中は私や片桐のような人間を頭のおかしい人と勝手に決めつけてくる。
そんなことを片桐と話しながらご飯を済ます。
そういえば……と、商品を取った場所に次の日になったら綺麗に置きなおしてあることを片桐に話す。彼は私の予想通り、興味を示した。
彼はならさっき取ったお弁当やサラダお茶のところに変化があるのではないかと、日が沈み昇るまで見張ると言った。
私はどこかで聞いた心理効果を使おうと、興味があるフリをして一緒にその瞬間を見たいと言う。
それから私と片桐はコンビニのイートインスペースに居座った。彼の実験の話を聞いたり、コンビニに置いてある雑誌や漫画を読んで過ごした。
日が沈み外も真っ暗になり自然と眠くなってくる。私が目をこすっていると「君も飲むかい?」と眠気打破と書かれたドリンクを差し出してくる。
私はそれを受け取り一気に飲み干す。
それから商品が視界に入るよう突っ伏した。片桐は時々態勢を変えながら商品の方をじっと見ている。
額になにかをぶつけた痛みで目が覚める。どうやら私は眠ってしまったようだ。
片桐は目を見開きぼーっとしていた。声をかけると起きているよと機械の音声のような返答。
「もしかしてみているとダメなのか……?」
彼は残念そうにぼやく。だがあきらめる様子はない。
「そういえば片桐さん……、言おうか迷ってたんですけど……」
「あぁ、あの風呂にあった死体のことかい?……」
やっぱり気が付いていたか。まぁ高田彩華の死体のある風呂がある家とコンビニは近い。強烈な匂いに気づかないはずがない。
しかし死体に気づいたにも関わらずなぜ何も言わなかったのか。
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