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4、例外
耳をつんざくような悲鳴で私は飛び起きた。
また誰かこの場所にきたのか、だとしたら今の悲鳴は埋めかけの片桐の死体を見てのことだろう。
あれから私は片桐を穴に落とし土をかけた。だが高田彩華とは違い顔だけ出しておいた。それを見たのだろう。
返り血がついた服は片桐と一緒に埋め、近くにあった服屋で着替えを調達した。
悲鳴が聞こえた方へ行くと案の定そこは片桐の顔が出ているところで、そこには三十台前半の男女と小学生くらいの男の子がいた。
男は立ち尽くし、女は男の腕にしがみつき固まっていた。
「あの……!」
そんな二人に私は声をかける。
ようやく私に気づいた二人は慌てて自分たちではないと否定をする。自分たちが見たときにはもう……。
「携帯……!携帯を持ってないんだ。すまんが警察を呼んでくれないか!?」
男が私に言う。私も所持していないことを言うと、二人は人が全然いないことを嘆いた。
泣き叫ぶ子供。とりあえず落ち着いてもらおうとまずは大人二人に状況を話す。
「そんなことあるか!いや、確かに人が全然いないが……。透明な壁に囲まれてるなんて……」
男は信じない。女は子供をあやしつつ私たちの会話に耳を傾け、女も否定する。
三人はタワーの見えるほうに向かって歩き出す。
しかし百メートルほど進んだところで壁にぶつかり立ち止まる。
私は近づき様子を見る。
「痛ったぁ~。なにぃ~」女はぶつけた額をさする。
「なんなんだ!?」男は驚き信じられないといっ様子で壁に手を当てる。
子供はすっかり泣き止み見えない壁に興奮し楽しそうだ。
「だから言ったじゃないですか。ちなみにあっちもあっちも、あっちも見えない壁があります」
四方を指さし言う。ここはどこなんだと聞かれるが、そんなこと私が聞きたい。
子供は笑顔で壁をこんこんと叩く。
「私たちはただ……火に囲まれた……」
女がそこまで言ったところで男が遮る。
「君はここがなんなのか知ってるのか?」
私は否定する。生首についても何も知らないと言うと男女はため息をついた。
三人は道路の端に座り込んでいるが気にしない。正直この三人では快感を味わえないだろう、そう思った。
三人まとめて始末するには物が足りず、一人ずつにしても仲良くなるのは難しいだろう。第一家族であろう者に興味がわかない。
私は一対一の思い出が欲しいのだ。
それにしてもいつまでこの場所にいるのだろうか分からない。ここに来た時と同じように目が覚めたらそこはいつもの見慣れた自分の部屋。
そんなことが突然起きるかもしれない。私はこの場所で、邪魔な正義マンがいないこの場所でもっと楽しみたい。
快楽を求めて何が悪い?
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