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1、何てことがあった
目が覚めたら知らないところにいた。……何てことがまさか自分の身に起こるとは思っていなかった。いや、大半の人間はそんなこと起こると思わないだろう。
真っ暗な部屋。目を開けていても何も見えないというのはまるで、目が見えなくなったようだ。もしかしたら本当に目が見えなくなったのだろうか?
そんなことを考えながら両手を伸ばしあたりを探る。両手をめいいっぱい広げると手のひらがぴったりと壁につく。前後はどうだろうかと同じように伸ばしてみる。
後ろは左右と同じように壁に手がつく。が、前はつかない。暗闇の中動くのはよくないと言うがこの場合動かざるえない。私はいつなにが起きるか分からない状況にドキドキと胸を鳴らしながら進む。
この状況になる前の愛護の記憶は、解体作業に疲れ涼しくしておいた部屋で休んでいたということだ。
狭く何も見えない暗闇の中をしばらく進むと光が見えた。暗闇が終わり眩しい光に細め目をつむり、開いた次の瞬間見えてきたのはい見知らぬ街だった。
後ろを振り返ると先ほど自分がいたであろう暗い道はなく、あるのは前と同じく町の景色だ。遠くにはタワーらしきものが薄っすらと見える。
どこかに駅などがあればここがどこか分かるのではないかと思い駅を探すことにした。
コンクリートに覆われた道を歩く。真上にある太陽、休みを取り始めたのは午後三時くらい。左右にはコンビニやスーパーがあるがその間間に家がある。表札のない家、住んでる気配がない。
人が誰もいない。おかしい。 本物の建物の中、ハリボテもある。歩いていると何かにぶつかった。 何にぶつかったのかわからない。目の前に障害物などないからだ。
ぶつかったのは見えない壁というやつだろうか。私は手を這わせ壁を確認する。
後ろ、来た道の反対方向はどうだろうか。私は来た道を戻る。すると最初の地点であろう場所から三メートルもしないところに前と同じく壁があった。
最初の地点から見て壁から壁まで百メートルと言ったところだろうか。では左右はどうだろうか。私はタワー方面に向かって歩いていた時に唯一あった脇道へと足を向ける。
脇道へ入り右にそれると左手に服屋があった。ここも誰もいない。数歩先にまた表札のない家がある。
試しにチャイムを鳴らしてみる。返事はない。おそらく他の家も誰もいないのではないかと思う。脇道の先にもみえない壁があった。
もしかしてこの場所には人一人いないのではないか。そう思いコンビニやスーパーの中も見回る。レジもバックヤードも誰もいない。
私は誰もいないことにラッキーと感じた。これが夢でなければ、私は捕まらなくてすむ。だが最後のあの感覚、あれをもう一度味わいたいと思うと誰かにいて欲しいと思う。
夢であるかどうか確かめるのに定番であるが頬をつねってみた。痛い。夢でも感覚があることもある。次に私はコンビニへ行きお弁当とお茶を取る。お金は払わなくても問題ないだろうと思い、レジ袋にお弁当とお茶を詰めコンビニを出る。
もしかしたらと誰も住んでいなそうな家のドアノブを回す。開いた。私は遠慮なく入ったが、そこは家具という家具がベッドしかなく、無機質なワンルームだった。
ベッド……。休みたいという気持ちが生み出したのだろうか。お腹が空いてきたので先ほどのお弁当を異に入れる。温めなくても鮭のうまみが口に広がる。いい弁当だと思う。腹八分を満たしレジ袋にゴミをまとめ窓から捨てた。
ベッドに横になり染み一つない白い天井を眺める。夢であってほしくない。捕まるなんてごめんだ。あの男が悪い。
これからどうするかは目が覚めてもここにいたら考えれば良い。そう思い私は毛布にくるまり眠りにつく。
目が覚めるとそこはベッドしかない無機質なワンルームだった。
夢ではないのか、外を見ると暗くなっていた。街灯や店には明かりがついていた。私は背伸びをし靴を履く。もしかして夜にだけ現れるなにかでもいるのだろうか、そう思い近くのコンビニへと行く。
だが相変わらず誰もいない。つまらないなと思い、店内を見回ったあとコンビニを出ようとしたとき、あることに気づく。
さっき取ったお弁当とお茶、この店から取ったが、取ったはずの場所にお弁当がある。まるで誰かがずらしたように並べられている。お茶も同じだ。
もしかして誰か隠れていたのだろうか、本当は誰かいるのではないか、そう思い外に出て当たりを見回すとタワーが見える方に人影が見えた。
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