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未来ではなく
もしもタイムマシンがあったら。
過去現在未来。
常に一方通行ではあったけど、ずっと続いている。
過去があるから現在があり、現在はすぐに過去となって、いずれ現在となる未来へと続いていく。
でもそれは、過去と現在と未来が時間という同じレールの上に乗っているというだけに過ぎない。
もしもタイムマシンがあったら、僕は未来ではなく、過去に行ってみたい。
レールからこぼれ落ちていったものーー、
現在に伝わらなかった過去の何か。未来へと繋がることのない、これから滅んでゆく現在の何か。
そういうものを、知りたい。
例えば、民族と共に滅んだ言語、
例えば、歌い継がれずに失われた歌、
例えば、焼かれてしまい、今は決して読むことの出来ない書物、
例えば、テクノロジーの進化によって駆逐された古い技術、
例えば、人間や環境に絶滅させられた動植物、
いかにネットを駆使して検索しようとも、もう触れることの出来ない、それでいてかつて確かに存在していたもの。
だけど現実は、たった先週壊れて捨ててしまったお気に入りの珈琲カップにすら、もうおいしい珈琲を注ぐことも、それを両手で包んで手を温もる事も出来ない。
今日僕が目覚めた時ですら、昨日まで世界のどこかで続いていたものが、知れず失われているかもしれない。
だから僕は、これからも未来ではなく、過去に憧れ続けるのだ。
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