告白

1/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
鈴木遼太くんへ まずは、卒業おめでとう。 …って、私も卒業するんだけど。 こうやって、遼太くんに手紙を出すの初めてだね。 今、この手紙を読んでるってことは、もう家に着いたのかな。 一応、遼太くんにばれないようにカバンに入れるって予定だから、多分そうなことを祈ります。 私たちが初めて会った日のこと、覚えてるかな? 入学して、最初に席が隣だったのが遼太くんで。 「ほら、ノート教科書しまえー。山本ー、今更遅いぞー。はい、今日は最初に小テストをします。今から…」 (どうしよう…うちの机に消しゴム忘れちゃった…今からは借りられないし…) 「後ろまで回したかー?はい、じゃあはじめ。」 カリカリカリカリ… (うわぁ…こういう時に限って早速間違い…教室も静かすぎて言いづらいしな…) ポトッ コロコロコロ 隣の男の子が何かを落とした音がした。 が、その子が拾いそうな素振りはない。 届かないところまで転がったのだろうか。 少し経って、男の子は静かに手を挙げた。 「鈴木、どうした?」 「先生。神崎さんが落とした消しゴムが、僕の机まで転がってきたみたいで。」 「お、本当だな。神崎、落としたら手を上げて先生呼べばいいんだぞ。鈴木、ありがとな。」 …え? え、え?? カリカリカリカリ… 「はいやめー。ペンを置いてー。山本ペン置ー。山本ー、終わりだぞー。じゃあ後ろの席の人…」 「鈴木くん、あの…これ…」 「あぁ、別に帰りで良いよ。俺消しゴム2つあるし。」 「なんで私が消しゴムないのわかったの?」 「そわそわしてたし、顔とか様子見りゃすぐわかるよ。」 淡々と喋る彼が、初めてニカッと笑った。 「…ふふっ。鈴木くん、ありがとう。」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!