思い出は食べものでできている

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プレゼントは安いお菓子でいいよ。お菓子は分けるから、あなたたちが食べたいものを選んで買ってきていいよ。 何年も何年も繰り返し聞いた言葉を、今さら思い返す。 それに比べたら、おしいセンスなんて、ちっちゃなこと。 ちらりと箱を開けてみる。綺麗な箱に、やっぱりホワイトチョコレートが入っている。 …………。 説明書きを読んでみた。わたしの見間違いだといいなって祈ったけど、どう頑張ってもホワイトチョコレートらしい。 …………。 ええと、でもこっちは美味しそうな板チョコらしいし、ビターもミルクもあるし。多分わたしこれ好きだし……。 うん。よし。 「もー、しょうがないなー!」 好きになれそうなところを探している時点で、もうしょうがない。しょうがないのだ。 わたしの思い出は、食べものでできている。その意味なんて、わかってるから。 ぎゅうと目を閉じた。 『あなた好きでしょう』 『こっち大きいからこっちあげようか。交換する?』 『ドライいちじくはなかったけど、冷凍ブルーベリーはあったよ』 『プリン、セールしてたよ。買ってく?』 『近くでたい焼き屋さんオープンしたんだって』 『さんまには大根おろしあった方がいいでしょ。おろしておいたからどうぞ』 『これ美味しいよ。一口食べる?』 『おつかれ。差し入れのチョコあるよ』 父はちょっとおしい。若干違う。でも、世界中がつめたくしめったとき、くすぐったいあたたかさをくれる。 そのあたたかさの名前を、わたしはちゃんと知っている。 チョコは紅茶を淹れて大事に食べよう。美味しかったよって言うんだ。それで、かわいいから箱はとっておこうかな。 「差し入れ美味しかったよ、ありがとう、差し入れ美味しかったよ、ありがとう……」 お礼を舌の上で転がして練習しながら、とりあえず、ホワイトチョコレートはあとでこっそり母にあげようと思った。 Fin.
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