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〜始まりは天王寺〜
男が1人、四天王寺の極楽門と言われる鳥居の前で呟いた。
ようやく目覚めた。長かった、と。
千年も掛った、と。
そして男は直ぐに──アイツの事を想い出した。
そのまま男は目の前にそびえ立つ鳥居の事を憎々しげに睨んだ。
そして胸の裡を鳥居にぶつける。
──何が極楽に通じる鳥居だと。巫山戯るな。
この世は輪廻転生、六道輪廻。
生まれ変わり、巡り、巡る六つの世界。
天上以外は。
須らく『地獄』だ。
地獄界、餓鬼界、畜生界、修羅界、
ーーそして人間界。今此処にいる世界。
此処がまさに生き『地獄』真っ只中。
この人間界のみが輪廻転生の枠から仏の教えを学べると言う。
アイツが学ぶ事などはない。
きっとまだどこかの世界で遊んでいる。
そうだ。
「千年前の様に五つの世界を限りなく隔たりをなくそう。此処の地獄の濃度をあげよう。千年前みたいに魑魅魍魎、百鬼夜行、跳梁跋扈のたのしい世界を──創ろう」
男は溢れる胸の裡を堪えきれずに、鳥居に喋りかける。
そうして楽しい世界を創ったら。
面白い事が好きなアイツは出て来てくれるだろう。
「やっと会えるかもしれない」
その為には。
「地獄を抑えている奴が邪魔だな」
──鬼が遊ぶにはもっと濃厚な地獄がいい。
そして千年前みたいにいっぱい遊ぼう。
そう思い、男は笑みを浮かべて極楽門を後にした。
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