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全てを察した私は口を開く。
「あの、もういいです。学校遅刻しちゃうし、面倒なのって嫌なんです」
「いや、もう少し待てば警察来るよ。悪い人赦しちゃっていいの?」
慌てた駅員さんとは対照的に、死にそうなほどしょげていたおじさんの表情には光が差した。
「学校の方が大事なので。それに痴漢の所為で皆勤に傷を付けたくもないし」
別に私が痴漢されたわけでもないしね。
思わず椅子から立ち上がったおじさんの表情に生気がもどる。私は九死に一生を得たおじさんに向け、抑揚のない淡白な口調で言った。
「誠心誠意、被害者に謝罪する意思を示してもらえるなら赦します」
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