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Ⅰ
これは、あなたの知らない幸せな世界のお話し。嘘だと思うなら覗いて御覧なさい、素敵な世界の深淵を……。
あたしは身体こそ売らないけれど、幸せを売っている。見ず知らずの他人を幸福にしてあげるのが趣味みたいなものなの。なぜ赤の他人なんかを幸せにするのかって? だって、――後腐れがないじゃない。くすくすっ。
心を持たない私は、豊かな感情を持つ人達から少しシェアしてもらう。別に大したことをするわけじゃないのよ、ただ頼るだけ。人間という生き物は男女を問わず、若くて可憐で可哀想な少女に頼られて気持ち良くならない人など居やしないんだから。自分よりも弱い生き物を保護するときに感じる、万能感や虚栄心を満足させてあげる。私は幸せを届けてあげる。ただ、それだけ。だって、みんな心の乾きに喘いでいるのだもの。私が、一服の清涼剤になってあげるのよ。広大な砂漠に湧くオアシスのようにね。私はそれに見合った、少しばかりのお返しを頂く。それでバーター、ウィンウィンの関係ってわけ。
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