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 これは、あなたの知らない幸せな世界のお話し。嘘だと思うなら覗いて御覧なさい、素敵な世界の深淵(しんえん)を……。  あたしは身体(からだ)こそ売らないけれど、幸せを売っている。見ず知らずの他人を幸福にしてあげるのが趣味みたいなものなの。なぜ赤の他人なんかを幸せにするのかって? だって、――後腐れがないじゃない。くすくすっ。  心を持たない私は、豊かな感情を持つ人達から少しシェアしてもらう。別に大したことをするわけじゃないのよ、ただ頼るだけ。人間という生き物は男女を問わず、若くて可憐(かれん)可哀想(かわいそう)な少女に頼られて気持ち良くならない人など居やしないんだから。自分よりも弱い生き物を保護するときに感じる、万能感や虚栄心を満足させてあげる。私は幸せを届けてあげる。ただ、それだけ。だって、みんな心の乾きに(あえ)いでいるのだもの。私が、一服(いっぷく)の清涼剤になってあげるのよ。広大な砂漠に湧くオアシスのようにね。私はそれに見合った、少しばかりのお返しを頂く。それでバーター、ウィンウィンの関係ってわけ。
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