6-2.想い出と似た人

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6-2.想い出と似た人

「アラ……アラン!! 起きろ!!」 体を大きく揺さぶれて、目を擦りながらアランは目を開けた。 視界がまだはっきりしないのか、黒髪のした男が呼びかけている。一瞬夢に見た久しぶりの彼とその髪の色が重なった。 「……レニウス?」 「っ……!? ……寝ぼけてる場合じゃない、直ぐに出るぞ」 重なって見えた姿がダニスだと気づいて、そこでやっと玄関の扉から派手なノック音が聞こえた。 「国兵だ!今すぐに出てこい!!」 兵士の荒げた声にアランは飛び起きた。 ダニスを見ると既に用意ができているのか、コートを着ていた。 なんで兵が戻ってきたんだ? 私がここに居るのがバレたのか?とアランは焦る。 そんなアランの様子に、急かす様にダニスが服と兵が一度来た時に被ったブラウンのウィッグを投げられる。 「早く着替えろ、直ぐに出るぞ」 慌てて渡された服に手を通す。 下町で見かける少年様な質素な服装だった。ウィッグを被って長めなので髪留めで髪を後ろに流すと下の方で緩く括る。 でも、ダニスは直ぐに出るとは言ったが、今玄関の外には兵がいる。いくら変装してるとはいえ、顔を見られたら気づかれるかもしれない。 「どうやってここから出るんだ!?」 疑問をダニスに言う頃には、置いてあった机の位置を動かしていて、何の変哲もない木で作られた床を軽く蹴った。 すると、驚くことに1人分くらい通れる幅で床の木の部分が浮いて、そこから下へ続く階段が出てきた。 所謂、隠し通路と言うやつだ。 アランは、突然の事に驚いた。 まさかそんな抜け道を用意しているなんて準備の良い事があるだろうか? ダニスの兵を追い払う手際の良さといい只者ではない……と思ってはいたアランだったが、これはいよいよ本当に普通の民間人ではない。 「何をしている、もう直ぐ扉をこじ開けてくるぞ」 急ぐように言われて、ハッとするようにアランはその隠し通路の階段を降りた。 続いてダニスは降りようとする際に、床の位置を元へと戻す。 その数分後、激しいノックが止むと暫くしてから扉が鈍く派手に音をたてて蹴破られた。兵士達は中に入ると、物の抜け殻になった部屋の様子を見て一人の兵士が舌打ちをした。 「逃げられたか……クソ! あの時に気付いていれば……‼︎」 ダニスは兵士の様子を耳をたてて聞きながら、隠し通路がある事に気づいてない事を悟ってから、物音を立てずに階段を降りっていた。 ダニスの口角が少しだけ上がるのを、アランは目の端で一瞬だけ捉える。 この人と、幼少の頃のあの少年を寝ぼけていたとはいえ、どうして見間違えたのか……。 共通点は髪と瞳くらいで、性格も人柄も違いすぎる。とそんな夢に見た想い出と共に、アランは不思議に思った。 しかし、この人ではなかったら、きっとこうやって逃げる事も出来なかっただろうとそれだけは分かった。 物の抜け殻になった部屋で立ち尽くす兵士が、数名を率いるリーダーに声をかけた。 「どうしますか?」 「一旦戻って隊長に報告するぞ。 ……ダニス・ハーヴァード……あの若さでこの国の闇社会を統括する黒のファントム。もし関わっているなら、一筋縄ではいくまい」
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