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「は、はいもしもし…」
『あぁ雛ちゃん、今いいか?』
「……はい、大丈夫デス」
『よかった。実は今日の夕方からいつものメンバーで花火大会に行こうって話になってさー。雛ちゃんどう?』
「花火?あぁ、どっかでポスターを見かけたような。今日だったんですね。……えっと」
チラリと柴崎を伺い見ると、雛の口にした言葉で理解したのか、大きく頷かれる。
「分かりました、行きます」
『オッケー。じゃあ時間と集合場所を……あ、このこと柴崎くんにも伝えといてー』
「え?」
『一緒にいるんでしょ?お楽しみ中悪かったね』
なんでもないように言われ、ポカーンと呆気に取られてしまった。
以前から勘が鋭いとは思っていたが…。
鋭い…、鋭すぎる。
少しして通話を切った雛は大きく息を吐き出した。
来栖には何もかもお見通しなのではと、末恐ろしくなる。
そういえば一番初めに自分の秘密に気づいたのも彼であった。
「雛?どうした?」
「っ、いや、なんでもっ。花火大会だったんだな。頭になかった」
ソファーに座る柴崎の隣に寄り添う。
すると優しく肩を抱き寄せられ、体がより密着した。
「夜、ふたりきりじゃなくなっちゃったな」
「うん。でもまぁ、みんなで遊ぶのも楽しいし」
「だな」
時計を見やれば集合場所まであと2時間と少し。
ちょうど映画一本くらいは観れそうだったので、借りてきたものの中からどれを観ようかか選び始める。
他のものは今度ゆっくり観ようと約束した。
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