2、ひらく

3/3
前へ
/5ページ
次へ
ねえ、チトセ。 誰がチトセのことを呼んだの? 一緒にお酒だなんて、適当なこと言わないで。 十年なんて、遠いのに。すごくすごく遠いのに。 花びらが、一枚、二枚、足もとにまとわりついて飛んでいく。 ほろほろとこぼれる甘い香り。 「泣いてるの? 佐和」 ママが聞いた。 「泣いてない」あたしは答える。 「ねえママ。あたしもケータイほしいな」 きっとあたし、十年後には。 きっとすごく、美人になるのに。 チトセが、気安くさわれないくらい。 どこにいたって、チトセを呼びつけられるくらい。 ひらいた梅の花を、思い切りにらんだら、本当にそんな日が来そうな気がした。 (おしまい)
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加