2、ひらく

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「ちーちゃん。ジュース飲んでいかない?」 ママが、家の中から出てきて、そう言った。 「ジュース? ですか?」 「梅のジュース。おいしいわよ」 チトセは、えんがわに座って、ママの出したジュースを飲んだ。 ノドボトケが、ごくごく動く。 「おいしい?」 チトセがうなずくと、ママは、満足そうに言った。 「このジュースね。この木に成った、青梅の実で作ったのよ。 たっぷりの角砂糖でつけこんで。 シロップを作って、ソーダで割ったの」 「へえ。すごい」 「ソーダじゃなくて、焼酎で割ったら、梅酒になるのよ」 ママはそう言うと、ひとりで笑った。 「ちーちゃん。秘密なんだけどね。 うちのパパったら、佐和がハタチになったら、一緒に梅酒を飲むんだあーって、楽しみにしているのよ」 「へえ。あと何年?」 「十年よ」 チトセが、あたしの頭の上に、ぽんと手のひらをのせた。 「いいなあ。佐和。愛されてるな。梅酒できたら俺も呼んで」 あたしは、グラスに口をつけて、ひといきにジュースを飲んだ。 ごくごくごくごく。 また、ケータイの音がピロンと鳴った。 チトセは目をふせて画面を見て、立ち上がった。 「もう俺、行かなきゃ。ごちそうさまでした」 「ばいばい」 「ばいばい」
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