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温室には、警察が集まっていた。鑑識が写真を撮っており、二人の刑事が中を見物していた。
「いやはや、話には聞いていたが、すごいな……」
「えぇ、本当に……これ、全部造花ですよ。一体どれだけ時間をかけて作ったんだか」
温室の中にある花は、どれも作り物だった。花壇を埋める葉も、植木鉢の中の土も、そこに張り巡らされていた根も、全て、全て。
「メアリ夫人の様子は?」
「まだ立ち直れないみたいで、話を聞けるのは先になりそうですね。夫が死んだのと、直前に拒絶されたのがよほどショックだったみたいです。死因が重度の花粉症の発作による呼吸不全だった……というのも、拍車をかけているみたいですよ」
「そうか……まぁ、愛だの献身だのを懸命にやっても、自分が望む形で帰ってくるとは限らんものだからな……しかしなんで、こんな作り物だけの温室の中で、花粉症なんかが起きたんだ?」
「さぁ……でも本当によく出来ていますよ。ほらこれとか」
若い刑事が、花壇に咲いている薄紅色の花を指さした。
「花って、自分を大事にしてくれた人に恩返しをしようとして、目一杯綺麗な花を咲かせるんですって。この花も、よっぽど大事に育ててもらったんでしょうね」
まぁ、作り物なんですけど。刑事は笑いながら、花弁を軽くつついた。
つつかれた花は、薄布で出来た花弁を誇らしげに揺らした。
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