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4月13日(月) 神咲 真
「あの、お弁当、一緒に食べませんか。」
顔を上げると男の子が立っていた。
まことは驚いた。
誰かに声をかけてもらえるなんて思っていなかったから、とても嬉しかった。
「うん!一緒に食べよう!」
お弁当を広げて、炒めただけの卵を口へ運ぶ。
「自分で作ってるんですか?」
「うん」
「えらいですね。とっても美味しそうです。」
男の子はそういうとにっこり笑った。
「…ありがとう」
そして、苦笑いしながら「でも、全然美味しくないんだよ」と付け加えた。
「じゃあ、味見。ひと口ちょうだい。」
口を開けて、顔を突き出している。
ボソボソの卵を箸でつかもうとするけど、うまくたくさん掴めない。少しだけ、入れることが出来た。
食べながらふふっと笑って、
「ほんとだ。でも、俺は好きだよ」。
それを聞いたまこともふふふっと笑った。
「ただ卵を炒めただけなの、なにも味付けせずに。きみのお弁当は色々入ってるね。」
食べますか?とおかずをひとつ箸で持ち上げ差し出された。
何かはわからなかったけど、ぱくっと食べてみる。
「すっごく美味しい!」
思わず大きな声が出た。
男の子はくすっと笑って「それはよかったです。」
昼休みが終わって、授業が始まる。
「ハイ、エブィワン!スタンダッ、プリーズ」
5限目は英語。
藤波先生オリジナルの号令がかかる。
「…ン?あら、寝てる子がいるわね。」
起立したまま。まだ授業は始まらない。
そういえば、さっきの子の名前を、聞きそびれてしまった。
また会えるだろうか。
「ふふ」
今日のお昼休みはとっても楽しかったな。
また一緒にお弁当食べたいな。
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