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4月13日(月) 若倉 亮
スマホ片手にコーヒーを飲む。
タン、タン、スッ…タンッ、タン、、、
芸能ニュースを片っ端から読み漁る。
"速水ルナ熱愛発覚!"
"アイドルグループKatieの風磨、人気女優と深夜のお忍び焼肉デート!"
"さとう まりあ&戸塚 翠 ハワイで挙式!"
嫌な気分を紛らわそうとしたのに、余計に悪くなった。
愛だの恋だの、くだらない。
くぁ、とあくびをして、コーヒーを口に含む。
昼休み、さつきに声をかけた。
「 行くんだ?」
落ち着かない様子で弁当を手に持っている。
「りょう、いよいよ作戦決行です。今日こそ話してきます。」
そういや今朝も言ってたな。。。
登校時間もわからない、休み時間も放課後も居ない、だから昼休みを狙うんだとかなんとか。
はあ、、、だる。
「作戦って…。ただ一緒に飯食うだけだろーが。」
「そんな簡単に言わないで下さい。めちゃくちゃ勇気要るんですよ。あ、もしよければりょうも…」
「めんどくせ。1人でいってらっさい。」
ひらひらと手を振って見送った。
タシッ、タシッ…
どこがいいんだ、あんなクソ女。
無意識にスマホをタップする力が強くなる。
モヤモヤが収まらない。
今度はゲームアプリを開いた。棒人間を操作して障害物を避けて通るだけのシンプルなゲームなのに、まだ最後のステージまでたどり着けない。案外集中するから、暇つぶしにはもってこいだ。今日こそ全面クリアを目指す。
タシ、スッスッ、、、タシ、スッ、、
予鈴が鳴りさつきが戻ってきた。
よっこらせと席を立ち、どーだった?と声をかける。
さつきはりょうを見ると、力強く親指を立てフッと笑った。
あっそー。ヨカッタネ。
シアワセそうでなによりだわ。
本鈴が鳴る前に自分の席へ戻った。
さつきとは幼稚園からの付き合いだ。
互いの母親同士も仲が良く、隣近所に住んでいるので、よくふたりでつるんでいた。
小学校5年生の頃、さつきが秘密を打ち明けた。
「おれ、まことのことが、好きなんです。」
まこと?
…ああ、神咲 真のことか。
これまで何度か同じクラスになったとこがあるけど、ほとんど話したことはなかった。
さつきのカミングアウトを受けてから、どんな子なのか気になって、他のやつと会話してるのをこっそり聞いたことがある。
あざといぶりっこのような発言をしているのが耳に入った瞬間、嫌いだと思った。
本人にも直接言った。
「なんでそんなかわいこぶってんの?自分のこと天然で可愛いキャラだとか思ってんの?」
「そーゆーの、キモいよ」
「…」
顔がどんどん歪んでいってポロリ、ポロリと涙がこぼれ落ちる。
「…可愛いと…思ってないよ…あの、、、ごめんなさい…」
下を向いて、必死に涙を拭う姿をみて、鳥肌が立った。そういうところだよ。
「泣くなよ気持ち悪い。」
そう吐き捨て立ち去った。
同じ中学校へ進学したはずだけど、あれ以来一度も姿を見たことはなかった。
噂では、さつきと頻繁に遊んでいたせいで、一部の女子から酷くイジメられたらしい。
あー、心底どうでもいい。
あんな奴のことなんかこれっぽっちも考えたくもない。
のに、、、
親友がそいつに必死に恋するせいで、嫌でもその存在を頭の片隅に置いておかなければならない。
ボソボソ喋るうえ、喜怒哀楽がわざとらしいく、発言の内容が無い、ただのイタイぶりっ子女。
どこがいいんだ。まったく理解できなかった。
さつきは賢くて運動もできる。なにより見た目が抜群に良い。当たり前だがモテまくる。
顔も性格も可愛いコと付き合うなら許容できるが、あいつとなんて、絶対に認めない。
…まあ、オレは関係無いんだけど。
りょうは1番前の席に座るさつきを見た。
黒板の文字を書きとる真面目な後ろ姿。
でも、長い付き合いだからこそわかる。
浮き足立った雰囲気がひしひしと伝わってきた。
…ああ、ほんとくだらない。
りょうは机の上にうつぶせて、くぁと小さなあくびをかくと、ゆっくりとまぶたを閉じ、モヤつく心に蓋をした。
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