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名前
ぽかぽかした陽気と、時折吹き抜ける冷んやりした風が心地よい。
まことは全身で春を感じながら、もくもくとお弁当を食べすすめた。
「たまには外で食べるのも気持ち良いね」
お箸を片付け、男の子の方を向くと、なにやらとても真剣な表情をしている。
「どうしたの?」
心配で声をかけたら、両手でほっぺたを挟まれた。それからゆっくり顔を近づけてくる。
…あ!そうだ!今日こそ聞きたいことがあるんだった。
「あの、聞いてもいい?」
「うん?」
「名前…なんていうの?」
「え?」
男の子は目を丸くして驚いている。
まことは勇気を振り絞って、続けた。
「もしよかったら…わたしと……友達になってくれませんか?」
長い沈黙のあと、男の子が「もちろんです」と普段どおりの笑顔で答えてくれた。
わあ やった!嬉しいな!
「わたし、かんざき まことっていいます。」
「しらぬい さつきです」
予鈴が聞こえた。
まことは立ち上がり、校舎に向かって歩き出す。
「さつきくん」
「また明日ね」
そう言って振り向くと、さつきが笑顔で手を振る姿が見えて、まことはほっとひと安心した。小走りで教室へ戻る。
よかった!
いつも聞き忘れちゃってたけど、ようやく名前、聞けた!
ワクワクしながら一気に階段を駆け上がる。
ああ…明日も学校が楽しみだなあ
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