カカイ沼

探索

　おや、たまのお客が来たようだ。見たところ学者か、学生か。冷やかしではなさそうだ。私が宿直担当の日に来るとは運が良い。どれ、少し話をしてこよう。

　待て待て、あんた。こんなところでなにしているんだい。え？　カカイ沼はどこかって？　研究？　あんた民俗学者かなんかかい。大学院って……ああ、有名なところだねえ。そこの教授はカカイ沼のこと何か言ってなかったかい？　聞いてない、か。そうかそうか。ん？　なに、せっかく来たんだ慌てなさんな。君は利口そうだ。私のわかる範囲でよければ昔話をしてやろう。

　こっちへおいで、沼まで案内してやるよ。怪しいかい？　じゃあ名刺を……いけねえ、切らしてたんだ。うーん、私は県から管理を委託されている会社のものでね、ほら、作業服も見たことあるだろう？　ない？　そりゃあモグリだなあ。あ、モグリっていまは使わないか。これは失敬。

　沼はこっちだ。少し登るからな。今日は久しぶりに夕方から霜が降りてね、滑りやすいから気をつけるんだよ。