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カカイ沼の噂
カカイ沼――もとい花開沼。
この沼に季節はない。
というのも、月明かりに照らされるたびに色とりどりの花や桜が咲きこぼれるからだ。白い花びらと、沼を覆うように立派に枝を伸ばした桜から舞う薄紅の花びらが散りばめられ、沼は絨毯のように華やかになるらしい。
もちろんこれは所詮言い伝えであり、花開沼もまた森の奥にあるものだから大変危険だと、ある民俗学者が立ち入りを禁じたらしい。それともうひとつ花開沼には噂がある。
月明かりのない新月の夜、沼の端にある石にもたれて楽しそうに愛について語る一人の青年と踊るように花を咲かせる無邪気な少年がいるとかいないとか――。
完
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