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2•櫻井総司
社会人の心得として、目上の人には失礼ないよう接するのが一番良いと思っている
「いや〜、久々に呑んだよ櫻井君!」
「光栄です八九寺副社長」
眩ゆいネオンの繁華街のはずれ、高級車に乗り込む副社長を見送るブランドスーツを着こなす櫻井は上機嫌に酔った副社長に肩を叩かれても爽やかな笑顔を浮かべて次の言葉を待つ。
「それにしても太客をまとめて契約してくるとは、社長も期待していたから出世するよ、櫻井君〜!」
「社長の期待とは光栄の言葉しか浮かびません。」
「ハッハッハッ!
じゃあ明日はゆっくり休んでくれたまえ」
運転手がドアを開くと慣れたように乗り込んでそのまま櫻井に手を振ると副社長の乗った車は櫻井から繁華街から遠ざかって行き見えなくなった。
「はぁ……疲れたし気持ちわるっ」
その途端に櫻井のこめかみが鈍く痙攣して頭を締め付けられ意識が霞がかり足元がよろけて何かにぶつかった
「ッ――痛って〜な、おっさんさぁ大丈夫?」
「んぐっ……」
いきなり胸ぐらを掴まれ顔を上げると繁華街のゴロツキが3人、櫻井を見上げるように睨みを利かせていた。
着崩した緩々なパーカーに蛍光色の黄色い帽子に見るだけで酔いが悪化する悪意のあるギラついた格好のゴロツキたちは櫻井を囲んで舐め回すように視線を動かさない。
「あぁっ、す、すみません……大丈夫ですから」
(おっさんじゃないし26だぞ……てか何なんだこいつら)
そう思いながら肩に乗せられた腕をはずそうと抵抗した瞬間、両肩を勢いよく掴まれ酒が大量に溜まった腹に重い蹴りが深くめり込み、吐瀉物がそこいらにピチャピチャと飛び散った
「アガッ……っ!?」
数分前に飲んだ酒や食い物やらが胃液と混ざり勢いよくシャバシャバと音を立てながら櫻井の口から途切れず吐き出されていく
「ちょっ、おっさん汚ねぇなぁあ?」
声を上げたのは櫻井の体を抑えていた男で今度は背中に重い衝撃が走った。
「も……勘弁してくれっ」
身体に走る痛みと脳のおぼろげな感覚に必死で吐いた言葉をゴロツキ達はニヤニヤ顔でもう一度もういちどと殴りや蹴りで櫻井を地面に打ちつけた
「ふぅ、スッキリしたわぁ。
じゃあおっさんの吐いたやつで服汚れたからクリーニング代と介抱してやった礼金な?」
言う前から鞄を漁っていた男に櫻井は心底悔しいが口から溢れる吐瀉物に手を抑えるのに精一杯で何も返せない。
手からはみ出し、すでにスーツや革靴が汚れている
「ゲット〜、おっさんもういいや」
「なんだ金持ちかよ、もらってからまたよろしく」
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