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櫻井は途方もなく続く哀れな感情を向けてくる通行人達に身体を無理矢理に起こして少し歩いてはゴミ捨て場に倒れこんだ
(ゴミの上とかドラマかよ……)
「あら、貴方大丈夫?」
「あぁ……」
重たい目蓋を開いた途端、目の前に女神が現れたかのように色づき吐き気が自然に下りていく。
夜の繁華街にひときわ目立つその人は艶めかしく長い髪を肩に垂らして豊満な胸が覗くセクシーな赤色の高級そうなドレスも涼しげな目元とルージュの唇で色気が溢れるその人にはお似合い。
櫻井は見惚れて口をポカーンとだらしなく開けて動かない。
「怪我までしてますね……ここに居ても邪魔になるのでうちの店にいらっしゃいね」
「あ、いや、」
所持金は確かさっき盗られたばかりと櫻井は慌てふためいて見せたが、フラッと女性は近くの古い喫茶店のような重厚な扉に入って消えた。
そして再び出て来たと思いきや傍らには細っそりとしたホストのような男が付き添って櫻井を見下ろす。
「薙沙さん、こいつスカ?」
金髪サングラスの男は汚いものを見るような目をサングラスから覗かせて先程の女性――薙沙が首を縦にうなづいて中に戻り、櫻井はホストと2人っきりに気まずさを覚えるが伸ばされた細い腕が一気に櫻井を腕一本で持ち上げ立たせた。
「ほらー薙沙さん先に行っちゃったじゃん、ほら行くよおっさん」
ズルズルと足を交互に引きずるような歩き方で櫻井は店の奥に辿りついたがすぐに浴室に投げ入れられた
「おっさん風呂貸してくれるらしーから綺麗にしてこいよーっ!」
ホストの声に身を起こして汚れたスーツや下着、全てを脱いでさっきからズキズキしているへそ辺りを見た、赤黒く腫れて櫻井の顔が歪んだ
お湯が突き刺すように疲れ果てた櫻井に当たる。
ふと、用意されたホストの物っぽい皺一つない長袖の黒シャツと良い生地が使われてピシッとしたパンツに着替え、オレンジの灯りが見える方に進んだ。
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