水の音

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 清美は、洗い終えた最後のお皿の水を切り、水切りの余ったスペースに差し込むと、水道の蛇口を閉めた。濡れた手をタオルに押し当てたとき、指先にピリリと痛みを感じた。あかぎれ。清美はもともと皮膚が弱いと自覚している。清美が独り暮らしを始めた当初、この特性に少してこずった。食器用洗剤が肌に合わず、ことごとく手に痒みを覚えたからだ。清美の手はかきむしったせいで、乾燥して荒れていた。一時期は小さく水を内側に溜めたように出来物が手のひらにできたこともあった。もともと清美は季節の変わり目にあかぎれができることが多く、子供の頃は、お気に入りの洋服に血のあとがついてしまい泣いたこともあった。成長するにつれ、対策を覚えて、ハンドクリームを使うようになり、あかぎれには対応できるようになっていた。しかし、食器用洗剤との問題は、なかなか、決着しなかった。ビニール手袋を使って洗い物をした時期もあったが、結局面倒になってやめてしまった。ハンドクリームでは手にできた出来物は治らなかった。当時の清美は母親に対応を聞いてみることにした。母親もよく手荒れしていたと思い出したのだ。
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