水の音

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 清美には今二人の子どもがいる。二人ともまだ幼く、手がかかる。やっと一人目が今年幼稚園に入る。清美は荒れやすい手に鞭うって子育てに奔走している。ハンドクリームは、次の濡れ仕事が常に控えていて、つけている間が見つけられなくなった。きっと部屋のどこかでほこりを被っている。清美には茜のように自己犠牲を貫く覚悟はない。けれど、母のその記憶にある姿は、照れ臭くて言葉にしないけれど清美の原動力のひとつだ。清美が手荒れに悩んだ学生時代も、子育てに追われる今も、母がいつも清美に秘蔵の書棚から答えを教えてくれる。今度は子育てしながら肌荒れ対策をする方法を教えてもらおう。清美は痛みを感じた手のひらを眺めながら、頬を緩ませ次ぎの作業にうつった。
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