片耳からはじまる恋

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「お、おはよう。昨日、勝手にそれ……使っちゃって、ご、ごめんなさい」 胸に手を当てて、ドキドキとうるさい胸の音を聞きながら、謝る。 「……」 伊月くんは、特に何のリアクションもないまま、こちらをじっと見ているだけ。 怒ってるのかな。 怒るよね、普通。 「あ、あの、いつも何を聴いてるのかなって、気になってつい、というか、その……」 言い訳がましく続けるけれど、緊張しすぎて、もはや自分が何を喋っているのかわからなくなってきた。 「えっと、だからって、勝手に使っていいわけじゃないんだけど、あの」 クラクラしてきたのは、熱のせい? 緊張のせい? あわあわと焦りながら、身振り手振りで言葉を繋げていると、伊月くんは外したイヤホンの片方をこちらに向けた。 「聴く?」
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