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わたしは、住宅街をぬけて大通りに出た。大通りには多くのパトカーが停まっている。殺人事件があった通りだから、警戒したり捜査をしたりしているのだろう。辺りをパトカーのライトが赤く照らしている。
警察官が数人立っている。その中に、お父さんは見当たらない。でも、ほかの警察官に見つからないうちに、通り過ぎよう。
わたしは慎重に辺りを見回しながら、目的地へと急いだ。
目的地。それは、大通りの先にある駅前通り。そこには、塾やコンビニ、本屋さんなどがあって、必ず誰かしら歩いている。
細い路地裏を通って駅前通りに出たわたしは、また辺りを見回した。そこで見つけたのは、塾帰りで迎えを待っているらしいクラスメイトだった。
みんな、塾通ってるんだ…。
わたしは静かにみんなの前に行った。
「みんな、こんばんは」
「あれ、都羽ちゃんだ。どうしたの?」
わたしが笑顔をむけると、みんなはとても驚いた表情をした。
「みんなはさ、空飛びたいって、思ったことない?」
「え?」
わたしの問いに、みんなは顔を見合わせた。
「……うん。ま、まぁ、飛べたらいいなぁとは、考えたことあるけど…」
「と、鳥とかもうらやましいよな」
「夢では飛んでるってこと、よくあるけどね」
戸惑いながらも答えてくれる。
「…じゃあ、みんなにも、赤い翼の作り方教えてあげる」
「と、都羽、ちゃん…?」
わたしは、戸惑ったままのみんなのうしろに回って、次々とナイフを振り下ろしていた。
みんなの背中から噴き出す血は、まるで翼のようだ。
見とれてしまって繰り返しナイフを振り下ろすから、体中血だらけだ。
「お、おいっ、やめなさい!」
入口前でほかの塾生たちと話していた先生が気づいて、止めようとしたけど、わたしは先生にもナイフを振り下ろした。ほかにも、数人大人たちが止めに入ったけど、みんな傷つけた。
「お前、都羽だろ」
しばらく経ったころ、そんな声がうしろから聞こえてナイフを振り下ろしていた腕をつかまれた。振り向かなくても誰だかわかる。お父さんだ。
なんで?なんで、ここにお父さんが…?
驚いて声が出ない。怖くて振り向けない。
…怖い?
わたしは、なにを怖がっているの?
人殺しになること?
捕まること?
それとも、自分?
ううん。一番は、お父さんに見られることだ。
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