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段ボールでつくった秘密基地……
竹藪の中にあったファンタジー……
朝は清廉で、夜には安らぎと希望があった……
水彩のような毎日にすべては溶け合い、異物はひとつも見当たらなかった……
なにもかもが順調だった日々……
あの日々。
今のわたしは、例えるならまるで安物の造花のようだ。
肉体が精神に完全に打ち勝ってしまった。
汗と血と、金属の味がする人間になり果ててしまった。
パレットの上で、綺麗な青色に少しだけ黄色を混ぜる。これも素敵な色だ。
そこに赤色を混ぜてみる。今度は紫を加える。徐々に何かがおかしくなる。
美味しいジュースのように透き通り、魅惑的だった色がだんだんと小汚い色になる。
そうなってしまったら、もう二度と元には戻らない。
そうして出来た色が、いまのわたしだ。
それが大人の色なのだ。
わたしは殺人犯で、そして同時に、大人なのだ。
あいかわらず蝉は鳴き、川は激しく流れていた。
橋の欄干はところどころが錆びていた。
さっきまで包丁を握っていた右手を動かすと欄干の錆びついた金属に触れてしまい、鈍い痛みを感じた。
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