11/28
前へ
/28ページ
次へ
 麗奈の身体から溢れ出る血しぶきと、膨らむ目玉のイメージがわたしの頭を占拠していた。  わたしの右手は小刻みに震えていた。      〇  白い服を着た女の子が青い空に向かって右腕を伸ばしました。 「本当に大丈夫なの?」 「大丈夫よ。見てて」白い服の女の子は言いました。  白い服の女の子は、魔女の娘でした。  彼女のお母さんは、村で有名な魔女なのです。  白い服の女の子は腕を伸ばしたまま、なにやら呪文を唱え始めます。  それは、周りの子供たちには理解の出来ない言葉でした。 「へんな呪文!」と男の子が笑いました。 「しっ!」隣の子が人差し指を口に当て、静かにするよう注意します。  みんな、静かに女の子の呪文を聞きました。  女の子は右手の人差し指で、太陽の方角をさしました。  女の子の呪文はなおもつづいています。  大声でもなく、囁くような声でもない。中くらいの声で、抑揚のない呪文が彼女の口から流れ出ていきます。  しばらくして、一人の子が異変に気付きました。  ハチの飛び方が、少し変なのです。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加